人類とインナーチャイルドの傷

心理学

人の成長にとって、心理的な“親超え”が必要な理由

私たち人類は、生物学的にとても弱い状態でこの世に生まれてきます。
生き物全体からみると人の赤ちゃんはみんな、未熟児の状態で生まれてくるのです。

人の赤ちゃんは親から自立するまで、とても長い時間を必要とします。

しかし、なんとか大人になったとしても、
人が一人で自給自足の生活を出来るようになることは、そんなにありません。

なぜなら、私たち人類の身体には遺伝子レベルで
「群れで互いを助け合う生き延び方」が本能として刻まれているからです。
人類社会は、互いに依存しながら生き延びてきた関係というのがベースにあります。

人は、ある程度心身が成長した段階(心理的な親殺しを達成するまで)になるまでは
無意識に依存しあう関係を探してしまう性質を持っています。

実家から独立して一人暮らしをして、
会社に就職したり、結婚してみても
今度は職場の人間関係やパートナーの中に
「自分の中の親の影」を見てしまうのです。

親の影とは、具体的には「生殺与奪の権利を握っている存在のイメージ」のことを指します。
他の言葉で表現するなら、権威や権力・財力など、
現実的な物事を支配するパワーとなりうるモノのことです。

私たち人類は全員 (それが表層意識に出ていようといまいと) 、
親に対し何らかのコンプレックスを持っています。

そのコンプレックスの原因が、無力な乳幼児期から大人になるまでの間に形成されるトラウマ、
インナーチャイルドの傷という言葉で表現されるものなのです。

大人を目指す、というのは、親の庇護を受けずに生きていくために奮闘することです。
その為にはまず、心理的な親の影響を否定しなければなりません。
これが、思春期以降に起こる反抗期です。

親の言うことさえ聞いていればいい生き方から、
親の言うことを聞かない生き方を手に入れることで、
無力な子供の状態から「自分には力がある」という自信をつけることができるようになるわけです。

同調して生き延びるか、独立して生きていくか

インナーチャイルドの持つトラウマの中には、親以外の
周囲の人間関係から影響を受けたものも含まれます。

親との関りがある親族や近所の人間関係、職場の人間関係や
子供自身が直接関わり合う教師や友達、クラスメイトなどがそうです。

一般的に人の社会構造は、自分が所属するグループ内(家庭や学校・職場、友達グループなど)で権力を持つことが重要視されます。

グループ内のリーダー格がどんなにいけ好かない人物だとしても、
そのグループに属している間はそのリーダーに嫌われないよう行動するほうが、
グループ内では良い思いが出来ます。

しかし、そのような親以外の人との関りの中で身に付いた
「他人の言うことに従うことでグループでの活動がもたらすメリットに依存する」習慣も、親と子供の間にある力関係によるコンプレックスと本質は大きく変わりません。

私たちが普段、あらゆる場面で感じる人間関係の悩みのほとんどは、
「所属するグループの人間関係がもたらすメリットとデメリット、自分の立ち位置」が原因となっています。

学歴や容姿で他人と差を付けたいと願って人々が努力をしようとするのは、
心理的な労力を減らして優位な立場でグループに所属するためです。

目立つ能力のない(と思っている)人間は、強い者に媚びて自分がグループに必要な存在であることをアピールする必要がありますが、それは自分がとても無力だった乳幼児期を思い起こさせます。

集団生活でうまくやっていくことに長けている人たちが、グループ内のキーパーソンやリーダーに取り入るのが上手いのは、それだけ生きるために備わっている本能が強いとも言えます。

しかし、同時にその行為そのものや、そのような人物は私たちに何とも言えないストレスを感じさせもします。
他人の機嫌をとることは、乳幼児期の親の庇護を受けるための自身の行為を思い起こさせるからです。

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